「何屋ですか?」と聞かれる。でも、何屋でもいいのかもしれない

トッティー
トッティー

「どんな仕事をしているんですか?」と聞かれると、いつも「印刷会社です」と答えているんだ。

そうすると、ほとんどの人は「へー」って感じで終わる。

チャッピー

「印刷会社」と聞いても、紙に文字や写真を印刷する会社、くらいのイメージなのかもしれないね。

でも、印刷会社にもそれぞれ得意分野があるんでしょう?

チャッピー
トッティー
トッティー

そう。チラシを得意とする会社もあれば、パッケージ、書籍、冊子、名刺、封筒、伝票、シールなどを専門にしている会社もある。

飲食店に寿司屋やラーメン店、パン屋があるように、印刷会社にもそれぞれの専門分野があるんだ。

チャッピー

じゃあ、トッティーの会社は何を得意としてきたの?

チャッピー
トッティー
トッティー

昔から、官公庁向けの小部数のモノクロ冊子を作ってきた。いわゆる「軽印刷」と呼ばれる分野だね。

文字が中心の資料や報告書、計画書など、ページ数は多いけれど部数はそれほど多くない冊子を、できるだけ安く効率よく仕上げる仕事だった。

紙版の両面印刷機と製本設備でモノクロ冊子を作る昔の印刷会社
チャッピー

多ページで小部数だと、大量印刷とは違う工夫が必要になりそうだね。

チャッピー
トッティー
トッティー

そのために使っていた印刷機も少し特殊だった。

紙でできた版を使い、表と裏を自動で印刷する両面印刷機。小部数でもコストを抑えやすく、多ページのモノクロ冊子を印刷するのに向いていたんだ。

チャッピー

印刷したあとの製本は、別の会社にお願いしていたの?

チャッピー
トッティー
トッティー

いや、うちには製本設備もある。

印刷と製本が分業になる会社も多いけれど、うちは印刷した紙をページ順にそろえ、綴じて、断裁し、一冊に仕上げるところまで自社で対応してきた。

印刷から製本まで社内で進められることが、小部数の冊子を効率よく作るための強みだったんだ。

チャッピー

まさに、専門知識と専用設備の両方に価値があった仕事なんだね。

でも、その印刷機はもう処分したんでしょう?

チャッピー
トッティー
トッティー

デジタル化が進んで、以前は冊子で配られていたものが、データやウェブサイトで公開されるようになった。

紙の冊子が不要になる場面が増え、官公庁の仕事も激減した。仕事が減れば印刷機を維持し続けるのも難しい。それで処分することになった。

チャッピー

今は、印刷そのものをやめたの?

チャッピー
トッティー
トッティー

今はオンデマンド印刷機が一台ある。版を作らず、必要なものを必要な部数だけ印刷できる機械だね。製本設備も残っているから、冊子に仕上げる仕事には今も対応できる。ただ、量が多いものは外注したほうが早いし、安い。

でも、それだけでは収益が先細りしてしまう。そこで、グラフィックデザイン、写真撮影、ウェブ制作へと仕事を広げてきた。

チャッピー

今の仕事の中心がデザインなら、「デザイン会社です」と答えたほうが実態に近いんじゃない?

チャッピー
トッティー
トッティー

たぶん、そうなんだと思う。

でも「デザイン会社です」と言うと、なんとなく格好をつけているみたいで気恥ずかしいし、大したデザインも出来ないのにデザイナーって思われるのがいやなのかもしれない。

カメラマンって紹介される時もあるけど、どこかで修行したわけでも、専門的にやっているわけでもない。誌面をつくる上で写真はとても重要だけどデザインするたびにカメラマンを手配するのが面倒なので自分で撮るようになっただけ。

かといって「印刷もデザインも撮影もウェブ制作もしています」と説明すると長くなる。結局、一番手短なのが「印刷会社です」なんだ。

チャッピー

「僕は印刷会社だ」と強く言いたいわけではなく、たまたま今まで印刷関連の仕事をしてきたから、便宜上そう答えている感じなんだね。

チャッピー
トッティー
トッティー

そうなんだ。それに、これからは「何屋か」という分け方自体が、だんだん曖昧になる気がしている。

今までは、道具と専門知識がなければ、その仕事はできなかった。そこに付加価値があった。

チャッピー

印刷会社なら印刷の知識と印刷機、製本設備。知識と道具の両方を持っているから、お客さんはそこへ仕事を頼んでいた。

ところがAIによって、専門的な知識にたどり着くまでの壁が、とても低くなってきたんだね。

チャッピー
トッティー
トッティー

もちろん、AIに聞いただけで熟練者と同じ仕事ができるわけではない。

それでも、以前なら専門家しか知らなかったことを、今は誰でも調べられる。残る参入障壁は道具、つまり資本になる。

逆に言えば、資本があれば設備をそろえられるし、足りない知識をAIで補いながら、以前より短い時間で「何屋か」になれる。

チャッピー

デザインやウェブ制作のように、大きな設備を必要としない仕事なら、資本の壁も低い。

知識も道具も多くの人が手にできるなら、何を基準に仕事を頼むかが変わってきそうだね。

チャッピー
トッティー
トッティー

そこで最後に残るのが、「誰に頼みたいか」なんじゃないかと思う。

印刷物やウェブ制作についてお客さまと相談するトッティーとチャッピー
チャッピー

こちらの事情を分かってくれるか。話しやすいか。言葉にできない要望を汲み取ってくれるか。安心して任せられるか。そして、最後まで責任を持ってくれるか。

知識と道具が広く行き渡るほど、仕事の価値は「何を持っているか」から「誰であるか」へ移っていくのかもしれないね。

チャッピー
トッティー
トッティー

これからは、何屋を名乗るかよりも、「誰に頼みたいか」が価値になる。そう考えると、印刷会社かデザイン会社かという肩書きは、もうそれほど重要ではないのかもしれない。

その人が気に入ればなんでも頼める時代。技術よりも人を磨く時代なのかな。